助かった

周産期

こんにちは。

本日は、この前あったエピソードなど.

こちらにいると、子供の命を助けるのは、本当に難しいと実感します。

とくに生まれたばかりの赤ちゃんは、なおさらです。

今回は、そんな毎日の診療活動の中で、奇跡的に助かった赤ちゃんのお話です。

1週間ほど前の午後10時ころ。

スンブヤの町にある診療所にいるただ一人の助産師のハワから電話が。。。

電話の内容は、昨日生まれたベビーが痙攣している、とのこと。

このベビーのパパは、シエラトロピカルの従業員で、ちょうど生まれたときに、嬉しそうに理事長たちのクリニックに赤ちゃんがうまれたことを報告にきていました。

前回の子供を亡くしているので、よっぽど嬉しかったのでしょう。

そのベビーが痙攣しているので、両親がスンブヤ診療所に連れてきた、とのこと。とりあえず、エコーだけもって(とりあえずそれくらいしか持っていくものがないので)、スンブヤ診療所に行ってみることにしました。

診療所に着くと、親類縁者がいっぱいきています。その人垣のまんなかに、ママにだっこされたベビーがいました。

とりあえず呼吸は大丈夫そう。熱もなさそうです。しかし、おっぱいを吸おうとしません。皮膚色は悪くありません。

はっきりした痙攣はないのですが、臨床症状から判断するのが難しいのが新生児の痙攣です。口をもぐもぐさせたり、自転車をこぐような動きがあれば、わかるのですが、どちらもありません。臍の緒もそんなに汚くはありません。

でも助産師のハワに言わせると、ぜったいおかしい、と言います。

下手な検査よりは、助産師の勘のほうがよっぽど頼りになるので、おそらく痙攣しているのでしょう。

原因はわかりません。妊娠中の感染症検査はこちらはしないので、何かの垂直感染かもしれません。

お産に立ち会ったナースによると、生まれてすぐ泣いた、と言います。ということは難産で新生児仮死で生まれてきたわけではなさそう。

もう夜も遅いので今からボーの病院まで行くことはできません。

とりあえず呼吸は大丈夫そうだし、皮膚の色も悪くないので、一晩様子をみることにしました。

翌朝早く診療所に行ってみると、昨夜はやっぱり何回か痙攣した、とパパが言います。おっぱいは全く吸おうとしません。

ちょうどその日は、理事長がボーの新生児当直にいく日だったので、一緒にママと赤ちゃんを車にのせてボーまで行って入院することにしました。

ボー病院の新生児室について、コットにのせて観察してみると、手足を不規則に動かして、時々ピクついています。脳波検査などできませんので確定はできないのですが、やっぱり痙攣でよさそうです。

原因は感染でしょうか。血液検査などできませんので、確認する方法がありません。とりあえず、できる治療をするしかありません。

痙攣を止めるために、フェニトインを使います。フェノバールがたまに置いてあるのですが、ここ数ヶ月入荷がないとのこと。痙攣の原因は感染と考えて、抗生剤も使います。というか、それしかできる治療がないのです。。。

呼吸は大丈夫そうなので、酸素は投与しなくてよさそうです。理事長がもっているバタフライは優秀なポータブルエコーなので、新生児の頭部エコーがある程度できます。

頭のエコーをしてみると、浮腫も強くないし、生まれる時に低酸素になったような痕跡はありません。

やっぱり感染かな。。あるいは代謝性疾患か。おしっこの匂いは特に気になりませんでした。

薬を投与してから痙攣はなくなったみたいです。翌朝まで、特に問題なく経過しました。

翌朝になり、理事長はスンブヤの町に戻らなくてはなりません。おっぱいさえ飲めれば退院できるはずです。母親にとにかくしっかりおっぱいをあげるように、と言って、後の処置を現地のドクターに任せることにしました。

その後1週間ほどして、現地のドクターからは何の連絡もなかったので、ベビーがどうなったのか聞いてみることに。すると、2、3日前に退院したとのこと。痙攣もなく、おっぱいも普通に飲めるようになったとのことでした。

んー、なんの痙攣だったんだろうか。。。まぁ、ベビーの感染は熱でないこともあるし、痙攣で発症することもあるよなー、そういえば、こっちは溶連菌とかまったく調べないし、溶連菌だったらもっと重篤になっているよなー、なんて一人で考えていました。

まぁ無事に退院できたから、いいか、と思って、毎日の業務をこなしているうちに忘れてしましました。

そしたら、そのベビーとママが、本日突然訪ねてきてくれました。もうしっかりおっぱいも飲んでいるとのこと。顔色もよさそうです。

よくあのボーの新生児室から生還できたねー、なんて変に感動しながら、この写真を撮りました。

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