血小板が15万/μL未満だとやっぱり分娩後出血のリスク高いかも、というはなし

周産期

マイルドな血小板減少(10万ー14万9千/μL)であっても、正常血小板数(15万/μL以上)の妊婦に比べると産後出血を起こすこリスクが2倍になる、とのアメリカ合衆国での研究結果が、2020年6月のObstetrics and Gynecologyに掲載されました(こちら)。

血小板とは

赤いのは赤血球で酸素を運びます。

白いのは白血球で、これは体に入ってきた侵入者と戦います。

血小板とは、出血したときに血をとめてくれる一番大事な細胞です。

血液の中には、成人で15万/μLから40万/μLくらいの血小板細胞が含まれています。

単位はマイクロリットル:μはマイクロで、100万分の1のこと。1μLは0.001ml。

妊婦さんではこの血小板が減ってくることが知られています。

多くは生理的なものなのですが、血圧が高かったりすると、血小板が消費されて減少し始めます。病気が悪くなるサインの一つでもあります。

生理的な血小板減少と病的な減少との線引きをどこでするか、ということが以前から議論されていますが、まだはっきりとした結論には至っていません。

一般的には10万/μLをきると、これは病的なもの、と判断することが多いようです。

今回は、10万/μLきるとこまでいかなくても、マイルドな減少でも結構あぶないんじゃない??ってことで、研究してみたとう背景です。

ちなみに、この血小板は寿命が短いため、つねに補充しておかないと緊急のときに使えません。だから、値段も高い!!

輸血は日本赤十字社から購入するのですが、1パック78000円くらい。ちなみに赤い血、つまり赤血球は16000円です。

オーダーして使わないと、始末書を書かないといけません。

結構、何度も書きました。。。。

マイルドな血小板減少でも産後出血は多かった。

血小板が10万/μLを下回ると産科医は焦り出すのですが、今回の研究では、そこまでいかない15万/μLをきるくらいでも出血のリスクが高くなりますよ、という結果でした。

研究方法は後ろ向きコホート研究で、対象は2016年8月から2017年9月まで単一施設(Cedars-Sinai Medical Center)に分娩記録がある単胎頭位分娩だった初産婦さん。

マイルドな血小板減少は10万/μLから14万9千/μLまでとしてます。正常は15万/μL以上と定義してます。血小板が10万/μL未満のシビアな症例は除外。産後出血の定義は、ICD-10の基準(500mlまたは帝王切開は1000ml)を使用しています。

第一の評価項目は、産後出血の頻度、第二評価項目は、子宮収縮薬剤(methylergonovine maleateとcarboprost tromethamine)を使用したか、1L以上の出血があったか、そして輸血をしたかどうか。

最終的に、血小板正常妊婦2579人とマイルドな血小板減少妊婦266人を比較してます。

両群間の背景(年齢、BMI、高血圧などの合併症など)に差はなかったとのこと。

結果は、マイルドな血小板減少のあった妊婦さんの産後出血の頻度は16.9%で、正常妊婦の8.5%と比較して有為に高かった、とのこと。さらに、1L以上の出血は16.9%vs8.5%で、やっぱりマイルドな血小板減少群のほうが頻度が高かった(有意差あり)。さらに、methylergonovine maleateもcarboprost tromethamineなどの子宮収縮薬も使う頻度が多かった(有意差あり)。でも、輸血の頻度は差がなかった(1.9%vs1.5%)。

経膣分娩症例に絞っても、あるいは高血圧の妊婦を除いた解析でも、やはりマイルドな血小板減少群は、産後出血の頻度が多かった、とのことでした。

しかしこの研究では、血小板10万/μL未満は13人(0.5%)しかいませんでした。

ちょっと少ないですかねー

周産期センターにいると、血小板10万未満の人なんて、結構見かけます・・・・・だから、10万/μL以上血小板があると、結構安心してしまいます(私だけですかね。。)。

やっぱり、分娩する妊婦さんの血小板が10万/μL以上あるからといって、慢心しないほうがいいよ、ってことですね。

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