Covid-19感染と妊娠に関して グリーンジャーナルから

周産期

Covid19についての論文ならびに記事が出ていましたので、要旨のみザッピングしてみました。

すべてフリーアクセスですので、詳しく読みたい方はアクセスして読んでください。

Editorialから

Is Universal Testing for Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 (SARS-CoV-2) Needed on All Labor and Delivery Units? 

Torri D. Metz, MD, MS 

陣痛発来した妊婦にたいするユニバーサル検査は必要か。

著者は必要である、と述べています。

Covid19は、すでに公衆衛生上の脅威となっていることに加え、感染情報があれば医療従事者が十分な防護策をとる時間を確保できますし、新生児に感染させるリスクを減らすことができます。さらに患者が重症化して、何か介入が必要となったときに迅速に動ける、などを利点としてあげています。

しかし、前提条件として各地域での検査能力と、その地域でどのくらいのprevalence(有病率)があるか、が重要であると言っています。

日本のようにPCR検査能力に制限がある場合、むしろ症状があってより重篤化しやすい患者層に検査能力をとっておく必要があります。

そして、有病率が低い地域では、ユニバーサル検査をしないことも選択の一つだとしています。

やたらと検査して、陽性だった場合、症状もなく過ごしていた妊婦さんにとっては心理的な負荷も大きいし、日本の場合なら、コミュニティからの差別なんかもあるかもしれません。

ユニバーサル検査をしないという慎重な選択も勇気ある行動かもしれません。

なによりも画一的なアプローチは害以外のなにものでもない、と言っています。

Characteristics and Outcomes of 241 Births to Women With Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 (SARS-CoV-2) Infection at Five New York City Medical Centers

Rasha Khoury, Peter S. Bernstein, Chelsea Debolt et al.

ニューヨーク市にある5つの病院からの報告。方法:SARS- CoV-2 陽性と診断され、3月13日から4月12日の間に、5つの病院で分娩目的に入院した人の経過を前方視的に追った研究。5つの病院のうち、3つは分娩目的に入院した全妊婦にPCR実施、1つは症状と疫学データから判断して検査実施(4月10日に全例実施へ移行)、1つは症状と疫学データでのスクリーニングを継続。データは診療録から抽出。結果:241人が分析対象。61.4%は入院時に無症状であった。26.5%は軽症(酸素必要なし)、26.1%は重症(呼吸困難感あり、呼吸数30回/分以上、ルームエアでSpO293%以下、レントゲンで肺炎所見あり)、5%は重篤(呼吸不全で挿管管理を要する、敗血症ショック、多臓器不全)。分娩方法は、症状が重症な人は52.4%が帝王切開、重篤な人は91.7%が帝王切開。単胎の早産率は、14.6%。17人(7.1%)はICU管理、9人(3.7%)は挿管。母体死亡症例はなし。BMIが30以上は重症化のリスクであった。新生児は出生直後の検査ではほとんど陰性だった(97.5%)。結論:感染者の半分以上が無症状だった。症状がなかった人でも、分娩のために入院した後から症状が出現し、急速に増悪することが観察された。肥満はリスク要因であった。重症であるほど、帝王切開率と早産率が高くなっていた。

Clinical Findings and Disease Severity in Hospitalized Pregnant Women With Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) 

Valeria M. Savasi, Francesca Parisi, Luisa Patanè, et al.

イタリアの病院からの報告。方法:2月23日から3月28日まで、イタリアの12施設で、SARS-CoV-2 に感染した妊婦を対象とした前向きコホート研究。データは診療力から抽出。

結果:77人の妊婦を分析。14人(18%)は重症。重症の定義は、ICU入院または呼吸不全のため分娩にした場合。2/3はthird trimesterに入院しており、84%は入院時に有症状であった。11人(16%)は、呼吸不全のため緊急分娩となっており、6人(8%)はICU管理となった。1人はECMO管理となった。母体死亡はなし。早産は12%で発生しており、9人がNICU入院となった。重症となった人は、妊娠前BMIが高く、入院時の呼吸数上昇、心拍数上昇、発熱、呼吸困難感の訴えの頻度が、重症でなかった患者と比べて、高頻度に認められた。結論:今回の研究では、Covid-19で入院した妊婦5人に1人が、呼吸不全で緊急分娩となっていたか、ICUに入院となっていた。母体死亡はゼロであった。妊娠前のBMI高値ならびに入院時の心拍上昇と呼吸数上昇は、感染の重症さと関連していた。

Rates of Maternal and Perinatal Mortality and Vertical Transmission in Pregnancies Complicated by Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 (SARS-Co-V-2) infection

A Systematic Review 

Benjamin J. F. Huntley, MD, Erin S. Huntley, DO, et al.

10症例以上含んでいる症例報告と論文を集めて解析してみたという内容。研究の報告は、主に、イタリア、中国、米国から。中国からの報告が最も多い。研究の時期は、2019年12月から2020年4月まで。結果:538人の妊婦と435分娩を解析。母体のICU入院は3.0%(8/263, 95% CI 1.6–5.9) 、重篤な症例は1.4% (3/209, 95% CI 0.5–4.1)。重篤の定義は、呼吸不全、敗血症、多臓器不全を認めた場合。母体死亡はなし。早産率は20.1% (57/ 284, 95% CI 15.8–25.1)、帝王切開率は、84.7% (332/392, 95% CI 80.8–87.9) 垂直感染率は、0.0% (0/310, 95% CI 0.0–1.2 、新生児死亡率は、0.3% (1/313, 95% CI 0.1–1.8) であった。考察:論文の大半は中国からの報告であり、症例が有症状者のみに偏っている可能性が高い。高い早産率ならびに高い帝王切開率も同じ要因が考えられ、中国ではCovid-19感染は帝王切開の適応であり、ウイルス感染治療には早ければ早いほどいい、という考えが一般的である。ちなみに、国別に帝王切開率をみてみると、イタリアでは42.9%、アメリカ44.4%、中国92.2%である。結論:Covid-19パンデミック初期の報告によると、母体および新生児死亡率は低く、垂直感染の報告もなかった。早産率は20%と帝王切開率84%と高いのは、中国での診療方針が影響している。

Symptoms and Critical Illness Among Obstetric Patients With Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Infection 

Maria Andrikopoulou, MD, PhD, Nigel Madden, MD, Timothy Wen, MD, MPH, et al.

Covid-19に感染した妊婦の症状と重症度を調べた研究。方法:3月13日から4月19日まで、NY市の2つの病院で行われたケースシリーズ研究。対象は、入院時にユニバーサル検査で陽性になった人と、症状があったため検査して陽性だった人。無症状か軽度の群と中等度から重症群に分けて、両群で比較している。中等度から重症は、呼吸困難感、呼吸数増加、低酸素症がある場合とした。結果:158人の対象者のうち、124人(78%)は軽症または無症状、34人(22%)は中等度から重症であった。中等度から重症であった妊婦15人において、10人は酸素投与などの呼吸補助を受けており、1人は挿管管理となった。中等度から重症の女性は、基礎疾患を持つ割合が、軽症群にくらべると有意に高く(50% vs 27%, OR 2.76, 95% CI 1.26ー6.02) 、喘息が最も多く認められた(24% vs 8%, OR 3.51, 95% CI 1.2629.75)。中等度から重症の女性の検査では、白血球減少、AST上昇、フェリチン上昇を認める頻度が高かった。症状では、咳、胸痛、胸部圧迫感が中等度から重傷者ではより多く認められた。9人がICUに入院し、そのうち4人は9日以上入院していた。症状増悪のため早産となったのは2人であった。結論:5人に1人の割合で中等度から重症者を認めたが、ICU管理が長引いたケースは少なかった。

Testing of Patients and Support Persons for Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Infection Before Scheduled Deliveries 

Angela Bianco, MD, Ayisha B. Buckley, MD, Jessica Overbey, et al.

予定帝王切開または分娩誘発する妊婦にユニバーサルテストをしてどれくらい陽性者がでるか調べましたという内容。分娩立会する人も同様に調べてます。電話でのスクリーニングが、どれくらい当たってたのか、も調べてます。方法:4月4日から4月15日まで、NY市のMount Sinai Health で予定帝王切開または分娩誘発をする人と分娩立会人が対象。入院1日前に、電話によるスクリーニングを受けています。電話での質問内容は、1)熱があるか、2)咳、息切れ、喉の痛みなどがあるか、3)嘔吐または下痢があるか、4)皮疹があるか、です。スクリーニングで陽性だった人は立会できません。妊婦とスクリーニング陰性だった分娩立会人は全員PCR検査を受けます。結果:155人の妊婦と146人の分娩立会人がPCR検査を受けました。無症状でPCR陽性だったのは、妊婦で15.5%(CI 9.8–21.2%) 、立会人で9.6% (CI 4.8–14.4%) であった。スクリーニング結果との乖離は、7.5%で認められた。PCR陽性妊婦の58%が立会人も陽性だった(電話スクリーニングは陰性)。PCR陰性妊婦の場合、立会人が陽性だったのは3.0%以下だった。結論:電話でのスクリーニングが陰性であった妊婦のうち15%以上がPCR陽性だった。また無症状で電話スクリーニング陰性だった立会人のうち58%がPCR陽性であった。PCR陰性である妊婦の立会人が陽性である確率は低かった。ユニバーサルPCRをしていなければ、医療従事者を感染暴露させていた可能性が強い。

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