mHealth:新生児の臨床能力サポートアプリケーション;ウガンダの地方病院で試してみた。

周産期

こんにちは。

今回は、JMIR mHealth nad uHealth から、ウガンダでの新生児管理用アプリケーションの話です。 

以前にも理事長のブログでお伝えしたことがありますが、この雑誌、mHealthを専門に扱う雑誌です。

mHealthとは何かというと、mobile Healthの略で、通信・連携が可能なモバイル、ウェアラブルデバイスを活用した健康、医療サービスのことです。簡単に言ってしまうと、アップルウオッチのようなデバイスを利用して、血圧や血糖値まで管理してしまおう、という試みのことです。

日本の周産期分野も例外ではなく、このmHealthの波が押し寄せてきてる、、、、と理事長は思いたいのですが、日本の医療環境はめちゃくちゃ保守的ですから、そう簡単にはいかないかもしれませんね。

まぁ、新型コロナウイルスのワクチン導入の経緯をみても、よくわかりますが。。。

コロナウイルスの話は置いておいて。。。

今回の論文は、タブレットで使える新生児管理用のアプリをウガンダで試してみた、という内容です。初診者でもわかるように、ナビゲート機能を持たせたり、新生児蘇生方法をビデオで確認できたり、とおもちゃとしては非常によくできています。

論文の内容自体は、大したことないので、まずはこのアプリがどのようなものなのかを詳しくみてみたいと思います。

NoviGuide

 これを開発したのは非営利組織であるGlobal Strategiesという団体(https://www.noviguide.com/platform)で、NoviGuideは、資源の制約が多い途上国向けに開発されました。

最初の画面は3つに分かれています。Resuscitation (蘇生)、My Patient(私の患者)、learning(学び)の3つです。

「蘇生」タブをタップすると、新生児蘇生方法のインストラクション3Dビデオを見ることができます。「私の患者」タブをタップすると、ポイントオブケアでつかる臨床診断サポート画面になります。ポイントオブケアというのは、実際に患者さんを診療しているベッドサイドで使える、って意味です。「学び」タブをタップすると、電子書籍になっている教科書を参照することができる、という構成です。

メニューバーには「緊急ボタン」があって、そこをタップすれば、痙攣の対処法などすぐに参照できるようになっています。

「私の患者」セクションでは、ステップごとに初見を入力することにより、ソフトが医療従事者に次のステップをアドバイスしていきます。 

たとえば、「私の患者」をタップすると、24時間以内にうまれた新生児、24時間以後、という具合に項目があらわれます。

 24時間以内にうまれた新生児という項目をタップすると、出生時体重や在胎週数などの情報を入力していきます。呼吸数とか、体温、それから母体の状態などを入力していきます。

すると、最後に、この新生児にたいする治療方針のまとめが表示され、CPAPと抗生剤(ゲンタマイシン5.5mgIV)などというよに画面に表示されます。 

この抗生剤の量だとか投与方法だとかは、国のガイドラインにそったものが表示される仕組みになっています。

さらに、24時間以降の赤ちゃんに対しては、バイタルサインの異常値を入力すると、抗生剤が必要かどうか、投与量、それから水分量などを自動で計算してくれ、画面に表示されます。

NoviGuideはオフラインでも使用することができ、Wi-Fiにつながれば自動的にデータがクラウドに転送される仕組みになっています。AndroidでもiOSでも動作可能です。

さて、実際の研究はなにをしたかというと、このNoviGuideをウガンダの地方の病院で働く看護師と助産師に使わせてみて、実際うまくいくのかどうか観察してみました、という内容です。

まず、ウガンダの小児科学会と協力して、5人のエキスパートを選定し、NoviGuideのコンテンツが、ウガンダのガイドラインと整合性が取れているかを検証し、そのあと実際の臨床現場の状況とあっているかどうかを調整しています。この調整は2016年の8月から11月にかけて行われました。

研究を実施したのは地方の中核病院で、月の分娩数は360件。さらに、新生児搬送を近隣の医療施設から受けて入れているような施設です。しかし、特別な新生児室はなく、重症な子達は、分娩室にあるインファントウオーマーに置かれているような状態でした。

NoviGuideを使うナースまたは助産師14名を選抜し、3時間の使用方法トレーニングを行っています。12ヶ月が経った時点で、usabilityを評価するためにアンケートに答えてもらった、という内容です。

結果は、、、

まあナースの知識も増えたし、十分使えた、という内容でした。そりゃ、そうですよね。。。そうでなければ、論文なんかにしません。

なので、この論文では、acceptabilityだとか、feasibilityだとかを数値化していますが、あんまり意味ないと思います。

おもしろいのは、sustainabilityで、やはり時間がたつと使われなくなっていっていました。導入初日-99日までは全入院患者の35%にNoviGuideを使用していましたが、100日ごとに使用頻度は下がっていき、導入から400日目には18%でしか使用されない、という結果でした。

著者たちは、この研究に参加した看護師や助産師たちの満足度は非常に高かったと述べています。そりゃ、アンケートとれば、みんな途上国の人たちはそう答えますって笑。時間の節約になったとか、知識が増えたとか、この著者たちは述べていますが、まぁ確かにそれも事実だとは思いますが、これでベビーの生存率が上昇したのかどうか。。。。。まったく本文中には記載がないので、おそらくなんの効果もなかったのかなぁ、、なんて意地の悪い理事長は思ってしまうのです。

今日はこのへんで。

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