診療記録

周産期

1歳6ヶ月の女児。3日前からの発熱と痙攣を主訴に搬送されてきました。重症マラリアと重症貧血です。

病院到着時、よびかければ目を開けますがすぐ眠ってしまいます。
40度近い発熱を認め、呼吸が早い。
すぐに点滴の薬を開始します。貧血も進行しており、ヘモグロビンが4.0g /dlしかありません。
いつものように、輸血、輸液、さらに髄膜炎の可能性もあるため抗生剤も投与します。抗けいれん剤を投与します。

薬が効いてくれればすみやかに状態が改善するのですが、今回はいつものように改善の兆しが見られません。
1週間ほど、いろいろ薬を試しました。発熱と痙攣はなくなりましたが、意識レベルが戻りません。
ママに抱っこされると、おっぱいは吸います。でも、ご飯をたべることができません。
目もたまに開けますが、ほとんど眠ったままです。

入院8日目の朝、ママが「もう帰りたい」と言います。理由はお金がないから、です。入院費や治療費は無料ですが、食費やおむつ代などがかかります。病院まで来るバイク代もかかります。

もう治療手段がなく改善が見込めないのであれば、最後は家族に見守られて過ごすほうがいいでしょう。

1週間分の荷物を頭にのせ、赤ちゃんを背中におんぶしたママは、最後に「ありがとう」とだけ言って、病院を後にしました。

親子を見送った後、病院の玄関先でふと空を見上げると、もう雨季は終わったのか、太陽がジリジリと肌を焼き付けてきました。

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