プロバイオティクス(乳酸菌+ビフィズス菌)と妊娠中のうつ

周産期

こんにちは。

今回は、最近話題のプロバイオティクス、つまり乳酸菌の摂取ですが、妊婦さんのうつを改善するのかみてみた、という研究結果をお話します。

論文は2020年6月のNatureに掲載されいています(こちら)。

結論から先にいうと、効果はなかった、ということになります。残念。。。

今回対象としたのは、BMI>30以上の肥満の妊婦さんです。使用したのは、乳酸菌とビフィズス菌(Lactobacillus rhamnosus GG and Bifidobacterium lactis BB12, minimum 6.5 × 109 cfU) です。

単体妊娠で、糖尿病や、胎児奇形があるような人は除外されています。

今回の研究の舞台になったのは、ニュージーランドの南オークランドCounties Manukau Health (CMH) regionというところにある病院なのですが、この場所の特徴として、社会経済的に下位層に属する人が多く住む場所であり、民族的マイノリティーが多く来る病院である、そんな場所にある病院単一施設での研究です。

肥満の妊婦を対象にした理由は、肥満もうつの産後うつのリスク因子であることが知られているためです。

今回の研究では、2つのリスク要因を抱えた女性に、乳酸菌を投与すると、うつ、不安などの検査スコアが改善するのでは、という仮説を検証しています。

うつ、不安、生活の質を調べる検査は何をしたのかというと、以下の3つの検査をしています。

産後うつの診断には、日本でもよく使われるEdinburgh Postnatal Depression Scale (EPDS) エジンバラ産後うつ診断スケールを使っています。0ー30点まで点数がついて、13点より高いとうつの可能性高いとして扱っています。

産後の不安の診断には、State-Trait Anxiety Inventory (STAI-6) 特性不安尺度を使用しています。20-80点までのスケールで、39-50点をカットオフ値として、これ以上高ければ、不安の可能性ありとしています。

最後に、健康関連QOL尺度である2-Item Short-Form Health Survey (SF-12-v2) を用いて、評価しています。これは日常的な身体機能の障害度合いをしらべるための質問事項で、身体機能と精神機能の2つの評価に分けられます。

研究方法は、妊娠12−17週の間に調査チームが患者さんたちを訪れて、上記の質問を行うというもの。その後、乳酸菌の入ったカプセルを内服する群と、プラセボの入ったカプセルを内服する群とに、ランダムに割り付けて、経過観察します。36週になった時点で、もう一回調査チームが訪問して、同じ質問をします。2群間での検査スコアを比較しています。

結果

全部で230人の肥満(BMI>30)の妊婦さんをリクルートして、最終的にプロバイオティクス群88人、プラセボ群76人で解析しています。

結果は、36週時点でのうつ、不安、健康尺度すべてにおいて、プロバイオティクス投与群とプラセボ投与群では検査のスコアに差がありませんでした。

今回の結果は残念でしたが、一口にプロバイオティクスといっても、いろんな菌株があって、いろんな研究で使う菌株もバラバラみたいです。先行研究である、Slykerman らの報告では、妊娠中の女性にLactobacillus rhamnosus HN001 を投与した場合、うつと不安が改善したとしています。しかし、このLactobacillusの菌株は種類が多くて、統一されたものがない、と指摘しています。

さらに、投与する量なども、統一されていません。

また、もとから健康な人には、あまり効果がなかいのかも、とも言っています。

成人のうつまたは不安とプロバイオティクスの関係を研究した論文のメタ解析では、ベースラインとして精神的に健康である人に使っても、その後のうつの発症率に差はなかったのに対し、すでにうつなどの症状があった人の改善効果は認めた、と報告しています。

著者たちは、今回の研究も、ベースラインのスコアが、エジンバラで7点台、STAIで6点台とそんなに悪くない人が対象になっていたから結果がでなかったのかも、と言っています。

新生児領域では、壊死性腸炎の予防として盛んに研究が行われており、2500g 以下の早産児についてはその有効性が認められているみたいです(こちら)。

母体に関しては、妊娠糖尿病へのプロバイオティクス投与の効果などが調べられています。最近出たコクランレビューによると、高血圧障害、帝王切開率、巨大児、の結果はどれもプラセボと比べて差がなかった、ということでした(こちら)。

腸内細菌が重要だ、というのは成人や小児では研究結果が出ているみたいなのですが、妊娠中や産後の女性に関してはまだまだこれからといった感じです。

今日はこのへんで。

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