帝王切開後の術後早期回復プログラム(ERAS)は、入院期間を短くするか ?

周産期

こんにちは。

帝王切開後に、早期離床などを含む術後早期回復プログラム(術後すぐにガムを噛む、NSAIDの術後投与、術後30分後から常食提供、など)をしても、術後2日目に退院する人は増えなかった、という研究結果が、2020年4月のAmerican Journal of Obstetrics and Gynecologyに掲載されました(こちら)。

イギリスの後ろ向き研究の結果では、ERAS導入により、帝王切開後の退院日が早くなり、再入院の頻度も上がってなかった、という報告があります。

しかし、今までランダム化した試験は行われていないので、今回やってみました、といった内容です。

今回の研究で対象となったのは、37週以降で予定帝王切開になった女性です。

術後に術後早期回復プログラム(ERAS;イーラスとよむらしい)群と通常管理群にランダムに分けて、術後2日目の退院が増えるかどうどうか、を検討しています。

研究の舞台となったのは、ニューヨークにあるWeiler Hospital of Mon- tefiore Medical Center です。

今回使用したERASにはどのような項目が含まれていたのかというと、、、

● キシリトールガムを噛む

● 24時間(6時間ごと)のNSAID鎮痛剤定期投与

● 早期経口摂取開始 飲水は手術直後、常食は30分後から

● 尿道カテーテルは12時間後抜去

● ガーゼは6時間後にとる

● 術後12時間から離床

● 8時間ごとのスパイロメトリー(肺機能をみるときに使うやつ)

退院可能かどうかの決定は、医学的所見によるものではなく、退院時に診察した医師と患者さんと相談で決めた、とのこと。

結果

研究期間は、2017年9月27日から2018年5月2日まで。

58人がERAS群、60人が通常管理群に割り当てられました。

ERAS群で術後2日目に退院したのは、5人(8.6%)、従来どおりの管理方法は2人(3.3%)で、両群間に差はありませんでした(effect estimate 2.74 0.51ー14.70 p0.24)でした。

さらに、二次的な評価項目として、痛み止めの麻薬使用が削減されるか、も検討していますが、ERASによる削減効果はありませんでした。

一方、入院してた時間は、有意差がありました。といっても、ERAS群で73.58時間、従来どおりの管理群で75.50時間、その差1.92時間短くなった、ということでした。

んー、2時間短いのか。。。。

そのほかの評価項目として、ERASのほうがよかったのは、完全母乳育児をしている人が多かった、術後6週間後のインタビューで、自分の希望がかなった、術後の行動マイルストーンを達成できた、母乳を継続することができた、と回答した人が多かった、としています。

それにしても、普通に管理しても3日目には帰るのか!と思ってしまうのは、理事長だけでしょうか。。。。

理事長がいたアフリカやアジアの国々では、帰って長く入院していることが多いですね。1週間は最低でもいます。

日本もだいたい、5-7日が一般的でしょうか。

著者らは、今回結果が出なかったのは、そもそも退院日って、医学的な理由だけで決まるもんじゃないね、と言っています。

誰かに病院に迎えに来てもらわないといけないし、家の準備もできてないし、みたいな感じですかね。

あと、結構、研究への参加を断った人がいた、とも言っています。実は、帝王切開後に早く家に帰ることってあんまり魅力的ではないのかもしれません。。。

それでも、完全母乳の人が増えたとか、満足度が高かったとか、まったく役に立たないわけではないですね。

日本だと、たぶん7日間くらいの術後入院期間が一般的だと思いますので、日本でやったらかなり効果ありそうですけど。。。。

今日はこのへんで。

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