14才の夏の空

本の紹介

今日は絵本の紹介です。

「14才の夏の空」

作 しまず よしのり

おばあちゃんと14歳の少年のお話し。

中学2年になった達也くんが自転車で新聞配達をしていた6月のある日。

大きな家の長い塀の下から出てきたしわしわの手に呼び止められます。

「おにいさん ここで新聞ちょうだい」

てのひらには、飴玉2つ。

これがおばちゃんと達也くんの出会い。

このおばあちゃん、結構おっきな家に住んでいて、達也くんはひょんなことから、この家でおばあちゃんの相手をすることになります。

おばあちゃんは車椅子にのっていて、とてもちっちゃくて、でも手だけはごつくて。目は鋭くて、なにかを探してるかのよう。。。家の人からは、「おばあちゃんは、とってもわがままだから。。。」と言われいます。

ある日、おばあちゃんが達也くんこう言います。

「死ぬ前にいっぺんのりたいものがあるんだ。」

それはジェットコースターでした。おばあちゃんはジェットコースターにのるために周到な準備をしていました。スポーツ用品店でヘルメットを購入したあと、タクシーで遊園地へ。

ジェットコースターにのったおばあちゃんはじっと前を見つめていました。

つぎにおばあちゃんが乗りたいと言ったのは、人気の恐怖スポットでもある超特大滑り台でした。足の悪いおばあちゃんじゃ無理、と達也くん。

「あんたが抱いて滑ればいいんだよ。」とおばあちゃん。

特製のベルトをつけて、おばあちゃんを抱っこして、全長100メートルの滑り台をすべります。

おばあちゃんはごきげんでした。

つぎにおばあちゃんが言ったのは。。。

「オーストラリアのジェットコースターに乗りに行こうとおもっている」

さすがに達也くんも驚いた様子でしたが、そこはおばあちゃん。またもや用意周到に準備して、あとはパスポートをとってくるだけ、というところまで話がすすんでいました。

季節はもう夏。その頃には、達也くんのお母さんもおばあちゃんと仲良くなっています。達也くんはお母さんと二人きりの母子家庭。ふさぎこみだったお母さんもいつしかおばあちゃんと楽しくすごすようになっていました。

さて、オーストラリアに到着すると、さらに飛行機を乗り継いでやっと着いたのは山に囲まれたかなり田舎のまち。ここでインストラクターの木村さんが二人を迎えてくれました。

そして3人がむかったのは小さな空港でした。

じつは、おばあちゃんはここでスカイダイビングをしにきたのでした。

やっと事情がわかってきた達也くんがおばあちゃんに、

「俺たちスカイダイビングするの?」ときくと

「そうだよ、そらをおりるんだよ」とおばあちゃんがタバコをくわえながら答えます。

高度2500メートル。ハッチがあいて、インストラクターの木村さんがおばあちゃんを背中から抱っこして飛び降りていきます。おばあちゃんの目は少女のように輝いていました。

達也くんもインストラクターの人に抱えられて飛び降りていきます。

「おばあちゃんは鳥になりたくて、おれといろいろ試していたんだ。」

着地した達也くんはおばあちゃんに駆け寄って、おばあちゃんやっと本当に空をとべたんだねと言います。するとおばあちゃんは。。

「そうだね、でもね、本番はこれからなんだよ」

次の日、山の上の競技場にいきました。

するとそこには新品のハンググライダーがありました。

そう、おばあちゃんは、このハンググライダーで大空を舞うために、ここまできたのです。

初飛行の日。山の斜面をおばあちゃんを乗せたハンググライダーが駆け下りていきます。

山の周りは、テレビ局まできて、すごい人だかり。みんなが見守るなか、おばあちゃんは、ふわりと空に舞い上がり、大空に浮いていきます。

おばあちゃん ガンバレ

おばあちゃん 鳥になって とんでるよ

涙がほっぺたをぬらして走った。

やったね おばあちゃん すごいよ おばあちゃん

オレは青空にむかってどこまでも走っていた。

「14才の夏の空」しまず よしのり

おばあちゃんが亡くなったのは、オーストラリアから帰って半年後のことでした。

*****

作中で、おばあちゃんのよく言っていた言葉がとっても印象的です。

食べちゃったもんが勝ちさ。誰もたべちゃったものを吐いてまでかえしてくれとは言わないからさ。

「14才の夏の空」しまず よしのり

しまず先生のおばあちゃん、とっても魅力的です。

残念ながら、この絵本は書店で販売してません。

しまず先生の美術館で購入可能です。ホームページはこちら

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