みずいろの空 そらいろの風

本の紹介

しまず よしのり作

みずいろの空 そらいろの風

11才のぼくとおじさんのダイスケのはなし。

ぼくは喘息があってからだが弱く、友達もいません。

毎日、家でチェロばかり弾いている。

ある日突然、ママの弟、つまりおじさんのダイスケが僕の家を訪れます。

10年間行方不明で、突然ふらりと帰ってきました。汚いヒゲだらけで、オートバイにのって、

そして、なぜかスイカを持って、家の玄関の前に突然あらわれます。

僕はダイスケが大嫌い。

10年前にふらりと出かけて、それきり音信不通。

僕のママをいつも心配させている。

ある日、おじさんは僕をバイクの後ろに乗せて、牧場へ行きます。

そこで、二人はいろんな話をします。

馬の尻尾や、すずむしの羽は、なんでこんなに綺麗な音を出せるのか。

そんなおじさんのはなしに感動した僕は、僕のチェロも同じかな、とおじさんにききます。

じゃあチェロ工房へいってみようということこで、お母さんの車を借りて長野県まででかけることに。

そこで、僕とおじさんは、ボロボロになったチェロを復活させることになります。

なんと、マッチ棒と割り箸とようじで修理しようということに。

最初は半信半疑だった僕も、やりはじめると夢中になっていきます。

三日かかって表板が完成。

それから、さらに何日もかけて、マッチ棒を板に貼り付けていきます。

さらにそれを紙やすりで削って、なめらかにしていきます。

指の爪も指紋もけずれてしまいました。

お母さんは、心配して、何度も夜中に見にきます。

僕は夢中でつくり続けます。

最後の魂柱(表版と裏番がつぶれないように当てる、家の大黒柱のようなもの)をたてて、

仕上げはニスぬり。

木の肌にキズをつけ樹液をとるといういことは、木の血液を絞り取るということなんだ。我々の文化はそうした自然の恵みのうえに成り立っている。だから森の木がなくなったら、文明も消えてしまうってことさ

「みずいろの空 そらいろの風」しまず よしのり

ニスを一度ぬってからまたサンドペーパーをかけ、またニスをぬる。

やっと完成したチェロの演奏会。家からおばあちゃんも呼んで、夏の夜空ににぶい、でもとても深い音色が響きます。

でも、おじさんはその夜、バイクにのってまたふらりとどこかへ行ってしまいました。

夏休みが終わり、展示会で僕のつくったチェロが評判となり、みんなの前で演奏することに。

演奏が終わった瞬間、学校中の生徒から拍手の嵐です。

そのときから、僕はひとりぽっちの人間ではなくなりました。

でも、僕の変わった姿を一番見せたいおじさんは、相変わらずどこへ行ったのか行方知れず。

夏はとっくにおわっていました。

あの夏から15年。。。

僕はチェロ奏者になりました。

そして、演奏しながら会場で探しているのは、あの髭面のおじさんの顔。

そんなある日、ミャンマーのPKOから山奥の学校で子供たちへの演奏依頼がきます。

10箇所ほどの山奥の村で演奏してくれとのこと。

私(その頃は自分のことを「私」と呼んでいます)が、ミャンマーの山奥にある村にきたころには、顔はヒゲボーボーとなっていました。村の子供達はみんな、私の顔をみるなり、「ダイスケ、ダイスケ」といってよってきます。

不思議に思った私が学校の先生に尋ねると。。。

実は、この小学校はダイスケが建てたものだというのです。

音楽室のオルガンも、畑も、井戸も、みんなダイスケがそろえたもの、とのこと。

「苗字はなんていうのですか?」

と聞いても、みんな「ダイスケ」としかわからないというのです。

でも写真が一枚教室の隅っこに飾ってあるという。

その写真には。。。

おおぜいの子供達に囲まれている一人の日本人 ぼくのひげのおじさんが写っていました。

でも、誰一人おじさんのその後を知りませんでした。

それから帰国した私は、いろんな団体の情報をしらべます。海外活動をしている団体に問い合わせたり、雑誌や新聞を調べたり。そして2年がすぎたころ。

海外事業文化財団の新聞に小さな広告みたいものが載っていました。

モンゴル国境地帯のポペチュ村の小学校でオーケストラをつくっているが、吹奏楽器が少ないので寄贈してくれないか、とのこと。そして連絡先を見てみると、そこには、田中大介 とかいてありました。

やっとおじさんにたどり着いた。

その年あらゆる予定をキャンセルして

私はおじさんと一緒につくった思い出のチェロとともに現地へ向かいます。

モンゴルの険しい山道をのぼっていく途中で見えたのは、

山の上のみずいろの空

そして、そこには、そらいろの風が吹いていました。

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なんともさわやかなお話です。

ダイスケおじさん 理事長はこういう生き方にめちゃめちゃ憧れるし、なんだか他人のような気がしません。

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