コロナウイルス 政策の負の影響

国際保健

前回からの記事内容と続いていますが、今回もコロナウイルス 対策がおよぼす負の影響、おもに妊産婦と乳幼児に及ぼす影響について、お話したいと思います。

「中低所得国におけるCovid-19の流行が間接的に妊産婦とこどもの死亡率に与える影響の推定」です。5月12日 Lancet Global Healthオンラインファーストに掲載された論文です(こちら)。

ウイルスそのものによって死亡するといよりは、ウイルスの流行に対処するために行う政策、つまりロックダウン、が間接的に医療サービスを制限してしまい、その結果として妊娠している女性とこどもの死亡率にどれくらいの影響を与えるのか、ということを推定しています。

研究では、118の低所得国において、「医療従事者や医療サービス(妊婦健診とか)へのアクセスがどれだけ減るか」と「こどもの”るいそう”がどれだけ増えるか」、という予想に基づいて、シナリオを3つ想定して、妊婦さんとこどもの死亡数がどれだけ増えるかを推定しています。

「るいそう」っていうのは、こどもの身長に対して体重が足りないということです。

食糧が手に入らなくなった結果どんどんこどもが痩せていってしまう、という状態ですね。

結論から言うと、一番シビアなシナリオのもとでは、今後6ヶ月の間に115万人の子供たちと5万6千人の妊娠している女性たちが、適切な医療サービスを受けられずに命を落とすだろうとしています。

けっこうな数ですね。ちなみに日本で1年間に死亡する妊婦さんの数は30人前後です。

何でこんなに死亡数が増えてしまうかと言うと、まず、妊婦さんの死亡に関連して、つぎの4つの医療サービスを受けられなくなることが大きいみたいです。

  • 分娩前の子宮収縮薬投与
  • 抗生剤投与
  • 抗けいれん薬投与
  • 清潔な分娩環境

ここで分娩前の子宮収縮薬が使われなくなると死亡数が増えるっていうのは、どういうことかというと、分娩がなかなか進まない場合に使用できなくなるから、だと思われます。難産ってことですね。

アフリカやアジアの国々では難産が原因で死亡することって結構あるのです。日本では考えられないですが。

日本では、妊婦さんが感染で死亡する、っていうことはほとんど考えられないですが、低所得国では、まだまだ感染は死亡原因の上位に入っています。抗生剤投与できないと、死亡数が増えるのも納得です。

抗けいれん薬って何に使うかというと、血圧が高い妊婦さんに使用します。妊婦さんが血圧が高くなる病気のことを、妊娠高血圧症候群といいますが、この病気で死亡する妊婦さんの数は低所得国では本当に多いです。

あと、清潔な環境っていうのは、病院で分娩しなくなる、ということです。

日本では、お産は病院でするのが常識ですが、これらの国では施設分娩は最近のトレンドです。

私のいたシエラレオネでは、最近ようやく病院での分娩が半数を超えたくらいです。

自宅で分娩するほうが当たり前なのですね。

つぎに、こどもの死亡を増加させる要因は、「るいそう」に加えて、以下の要因が大きいみたいです。

  • 肺炎や新生児の敗血症に対しての抗生剤投与が減る
  • 下痢に対して使う経口飲料が減る

低所得国に住んでいる子供たちの低栄養は大きな問題です。こどもの4人に1人がすでに低栄養であるという報告もあります。

そこにロックダウンなどで食料が手に入らなくなると、さらにこどもの「るいそう」が深刻化するだろう、と著者らは仮定しています。最悪シナリオだと、2人に1人の割合で「るいそう」になる子供が増えると想定しています。

日本でもロックダウンで飲食店や観光業は大打撃をうけています。失業する人も増えるかもしれません。でも、日本のような国なら、妊婦健診が止まってしまうこともないし、必要な医療サービスを受けられなくなることもありません。

ところが、アフリカやアジアの低所得国では、日本では想像もできないようなことが起こり得ます。

薬がないから、医者や助産師さんがいないから、今日は分娩できません、なんてことがふつーに起こったりするのです。

ロックダウンして、医薬品が運ばれてこない、医者や看護師が外に出れない、あるいはコロナウイルス 優先で、そちらに対処するために重点的に配属されちゃいました、なんて事態になっていることは想像に難くありません。

さらに、こどもたちが十分に食べられなくなる、なんてことも十分あり得ます。

日本も、こどもたちへの無料の給食サービスとかニュースでやってましたね。日本ですら、食べれなくなる子供がいるのですから、こういう国々では、いったいどうなってしまうのか。。。

ちょっと、想像してみてください。

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