おなじみ木彫りの小人ウイミックスが主人公の絵本です。
今回のパンチネロは、流行をおいかけることに夢中になります。
あるとき、村では鼻をみどり色に塗ることが流行っていました。
小人たちが長い行列をつくっているのをみたパンチネロがいいます。
「どうしてみんな、鼻をみどり色にぬりたがるのかしら?」
すると作り主のエリが答えます。
「まわりのみなんがそうしているからだよ。」
別に鼻をみどり色にぬったところで、強くなれるわけでもないし、速く走れるようになるわけでもありません。
「鼻をみどり色にぬったらどうなるの?」
そう聞くパンチネロに、エリが答えます。
「ただ、みどりっぽくなるだけさ」

でも、村の小人たちは、みんなみどり色の鼻を自慢げにツンと高くあげて、上をむいて歩いて行きます。その危ないことといったら。前がよく見えないなので、みんなぶつかったりしながら歩いています。
ぼくはぜったいにあんなふうにはならないよ、とパンチネロは興味がない様子。
でも、ある日かわいい女の子ツイギーから、みどりの鼻のパンチネロのほうが素敵、と言われてしまいます。
ちょっとぐらついているパンチネロ。友達に鼻をみどりにしようかどうかと相談して、迷っている様子です。
街の広場では、みどり色の鼻の流行をしかけたウィリーウィズィットさんを、俗物のかたまりのよな存在である村長さんが表彰しています。
「こんな素敵なことを思いついてくれてありがとう!」
「鼻をみどり色にぬってから、わしは、前よりりっぱなウイミックになりましたぞ!」
と言いながら、ウィリーウィズィットさんの首にメダルをかけていました。
そして、パンチネロのことを指差して、「もっさりしたウィミック」と言って、集まった鼻をみどり色にぬったウィミックたちと一緒に笑ったのでした。
とても恥ずかしい思いをしたパンチネロ。とうとう、鼻をみどり色にぬる決心をします。
パンチネロは二人の友達と一緒にお店にいって、鼻をみどり色にしてもらいました。
そのときの素晴らしい気分といったら!
パンチネロは、他のみどりの鼻をしたなかまたちとあそび、毎週はなの手入れのためにお店に通いました。
パンチネロはいいます。
「鼻をみどり色にしないやつの気がしれないよ」
そんなことを友達といいあっていたある日、ふと通りを見ると、鼻を赤くしているウイミックが歩いています。
パンチネロたちは、なんだ今の流行を知らないのか、と言ってバカにしますが、周りを見ると一人、また一人、と赤い鼻をしたウィミックが目にとまります。
そしてほどなく、周りは赤い鼻のウィミックばかりになっていました。
パンチネロと友達は大慌てで、鼻の色を変えてもらいにお店に向かいます。
やっと流行に追いついたと思ったのに。。。。そう思いながら、鼻を赤くしてもらいました。
3日ほどして、やっと赤い鼻になれたパンチネロたち。
自慢しようと街に出てみると、今度は青い鼻をしたウィミックがたくさんいます。
パンチネロたちはしかたなく鼻を青く塗り直します。もうこれが最後だからね、と言いながら。。
しかし、やっぱり最後にはならずに、こんどはピンク色が流行します。そしてまたすぐ、別の色が。。。
何回も鼻を塗り直しているうちに、パンチネロたちはもうもとの鼻の色がどんな色だったかわからなくなってしまいました。
もういやだ。。。
パンチネロは思います。「エリのもとにいってもとの鼻にもどしてもらおう。」

エリがやさしくパンチネロにききます
「みんなんの真似がしたかったんだね。それで、どうだった?」
「はじめはよかったけど。。。。やっとみんなと同じになったと思ったら、だれかがまたべつのことをはやらせるんだ。」
「もとのようになれる?」
もちろんだよ、といいながら、エリはパンチネロの鼻をサンドペーパーでゴシゴシこすりました。すごくいたかったけど、もとの自分にもどるにはしかたのないことでした。
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人間のわたしたちから見れば、小人のウィミックたちの流行って、馬鹿げているしなんの魅力も感じないですね。でも、パンチネロたちは真剣です。
それがまた滑稽ですよね。
そして同じ価値観(みどりの鼻がカッコいい)をもつものどおしが集まってあそぶのは、さぞ気持ちがいいことなのでしょう。
その価値観が共有していないものを、区別して差別する。
人間の営みだって、神様目線から見れば、小人たちのやってることとそう大差ないことなのでしょう。
現在の日本で言えば、筋トレとか、投資とか、最近理事長の周囲でもやっている人が増えてきています。
お金があろうとなかろうと、筋肉隆々だろうと太っていようと、実はそんなことが気になるのは人間の価値観の枠から出られていないことの証拠なのかもしれません。
それでは、今日はこのへんで。
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