IGPCの最終ゴール:コンゴ民での雑感

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こんにちは。

理事長はいま、コンゴ民主共和国にいます。シエラレオネとかコンゴとか、聞いたこともないような国ばっかりに行っていますが、今回は、論文とか国際保健とかのお話ではなく、こちらにきてちょっと思ったことなど書いてみたいと思います。

今回のミッションは、臨床活動というよりは日本のメーカーが作っている検査機器とかをこちらでデモンストレーションして、どの程度使えそうか検証することが目的です。

なので主に活動は、スマホエコーを練習させてみたり、ポータブルな検査機器を実際に使ってもらったりして、感想を聞いたりしています。

実は、その中に理事長たちが共同で開発している母子健康アプリがあります。これは妊婦健診の記録から分娩記録、2週間検診や、さらには乳児検診まで、1つのアプリで記録してしまおおうというものです。

さらにこのアプリケーションは超音波装置機能も入っていますので、超音波プローブを差し込めば、そのままスマホ画面がエコー画面に早変わりします。

当然、通信機能もついていますので、もしエコーしていて誰かに相談したくなれば、電話ボタンをタップするだけで、フェイスツーフェイスの対話が可能となり、今見ているエコー画面を遠くに住んでいる専門医に見てもらうこともできます。

電子母子手帳なるものも色々開発されていますが、どれも単にデータをとるためだけにデザインされていますので、入力画面がめちゃめちゃつかいにくい。

助産師さんが日々の業務しながら、入力するようにはデザインされていません。理事長たちが開発しているアプリケーションのインターフェースは、日常の業務を簡単にできるようにデザインされています。

そのほかにも、メロディインターナショナルさんが開発した、ワイヤレスモバイルCTG(胎児心拍陣痛図計)や、OUINCさんが開発した、スマホにつけるだけで細隙灯検査ができるデバイスなど、モバイルヘルスデバイスたちをたくさん持ってきています。

その詳細は後日お話しするとして、今回は忙しい業務の合間にとったなにげない一枚の写真をみながら、理事長たちがどのような世界を目指しているのか、お話ししたいと思います。

こちらの写真に写っているのは、いま一緒に仕事をしている株式会社SOIKの古田さんです。古田さんは、コンゴJICA事務所で何年も勤務された経験をもつ途上国開発のエキスパートで、現在はご自分の会社であるSOIKを立ち上げられた社長さんでもあります。

今回のコンゴ民主共和国でのミッションも古田さんからお声がかかり、参加させてもらうことになりました。

さて、この写真は先週の休日にキンシャサ郊外へみんなで出かけてた時に撮ったもの。古田さんと一緒に写っているのは、JICAコンゴ事務所に16年間勤めているというオリビエさんとその奥様。古田さんとは、JICA時代からの古いお友達だそうです。

実は古田社長さんは、この前パパになったばかりです。

日本にいる古田さんのご家族とネットでつないで、オリビエ夫妻がスマホの画面ごしに古田さんの奥様と赤ちゃんとお話ししています。この写真はその時に撮ったもの。

とても幸せそうで、楽しそう。

お金のある人も、お金のない人も、日本にいても、コンゴにいても、生まれてきた赤ちゃんを見ながら、「おめでとう、よかったね」と言い合える。そんな繋がりを世界中で築いていくのが、我々の最終的なゴールです。

私たちの目指すのは、日本にいる赤ちゃんとその家族を、コンゴにいる人たちが祝福していくれる。そして、コンゴにいる赤ちゃんとその家族を、日本にいる「あなたや私」が祝福してあげる、そんな世界です。

我々のミッションである周産期医療を世界に届けることは、その第一歩でしかありません。日本では当然のように無事で生まれてくる命が、ここでは数多く死んでいきます。

無事にうまれることが奇跡みたいなこの国で、うまれたきたことを日本にいる誰かと喜びあえる世界。国を超えて、海を越えて、世界中で「おめでとうと言い合える世界」をつくるのが、我々の最終的なゴールなのです。

でもどこの誰だかわからない人の赤ちゃんの写真を見せられても、まあ赤ちゃんはみんなかわいいですけど、特段特別な感情はわきませんよね。あーかわいいな、と思うくらいです。

それが自分と少しでもつながっている人、たとえば家族だとか友人だとか、そんな知っている人から出産しました、と連絡がくれば、心から嬉しくなっておめでとうといってあげたくなるはずです。

それが国境を越えるだけの話です。いままでは、想像すらできなかった遠い国の赤ちゃんやお母さんと繋がることができる。そして自分ごとのように、心配して、そして一緒になって喜ぶことができる。

さらに困っていたら、何か手助けすることもできる。

誰かに何かをしてあげたいと思うのが人間です。

ICT技術の目覚ましい発展により通信コストはかぎりなくゼロに近づきました。さらに、いままでは銀行口座を持っていなかった人も、デジタルマネーを利用すれば、スマホや携帯があれば銀行口座がなくても、送金や受け取りが可能です。

特定のだれかを支援するには、あまりにも高かった障壁が、通信技術やデジタル技術の発達でいまや可能となりつつあります。日本にいる私やあなたが、コンゴにいる特定の誰かと繋がることは、フェイスブックや他のSNSを使えば簡単にできます。フェイスブックのザッカーバーグはさらにデジタルマネーでお金のやりとりまでできる仕組みを作ろうとしています。そうなれば送金コストは限りなくゼロになります。

いままでのフォスターチャイルドプログラムでは、特定のだれかを支援したくても銀行間送金のようなコストのために個人間の支援は事実上不可能でした。だから里親とは言いつつも、実際にお金は支援したい家族のために使われるのではなく、NGOなどの組織が一旦お金をプールして、その地域全体のプロジェクトに使われるという仕組みです。

確かに、村に学校を建てたり、井戸をほったり、道路をつくったり、それらの活動が子供達の将来に役立つことはわかります。しかし、それは学校建設プロジェクトとして、あるいは安全な水プロジェクトとして寄付を募ればいいのです。「子供たちのため」という括りで寄付をつのれば、その使い道は際限なく広がっていってしまいます。どこにいくらお金を使うかという判断は寄付を募集した団体の恣意的な判断にまかせる以外ありません。それって、ほんとにいいことでしょうか?

日本にいるわたしとあなたを、この国の赤ちゃんとお母さんとつなげてあげる。赤ちゃんがうまれたら、おめでとう、と言ってあげられる。誰だかわからない人に寄付するのではなく、私がおめでとうと言ってあげたい「このお母さんとこの赤ちゃん」を支援してあげる、そんなことが可能な社会は、もうすぐそこまできています。

しかし、現実は程遠い。まだまだお産で命を落とす母体も新生児がたくさんいます。「おめでとう」と言ってあげるためには、安全にお産ができる医療が提供できる環境が必要です。

そのために我々は実際に発展途上国での臨床活動を通じて、なにが必要なのか、どうやったら1人でもおおくの母体や赤ちゃんの命を失わずにすむのか、を考え続けています。

それと同時並行してすすめているのが、日本にいる「あなた」と、コンゴやシエラレオネにいるお母さんや赤ちゃんとを繋げるアプリケーションの開発です。

冒頭で紹介した母子健康アプリケーションは、このアプリケーションへの第一歩です。電子母子手帳のアプリケーションは種類がたくさんありますが、私たちが考えているのは、ただ単にデータを集めるだけのものではありません。

妊婦と助産師とのコミュニケーションはもちろんのこと、日本に住んでいる「私」や「あなた」との双方向のコミュニケーションを可能とする機能を付け加える予定です。

と、いろいろ書いてきましたが、どれもこれもまだまだ夢みたいな話ばかりです。アプリケーションの開発にはお金がかかります。途上国で使える医療機器開発はさらにお金がかかります。

いままで助成金申請を色々しましたが、まだひとつも獲得できていませんし。。。道はなかなか厳しいです。

きょうはこのへんで。

コメント

  1. 森勇治 より:

    素晴らしい活動をされていることに驚いています。その後どうされているのかと思っていました。
    中学高校と同じ学校に居ました。森です。もしご覧になっていたら、ご連絡ください。

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