毎週火曜日は妊婦健診

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毎週火曜日は妊婦健診の日。

ということで、今日は、恒例のスンブヤ診療所での妊婦健診の日です。

いつもながら、蒸し暑い小部屋で汗だくになってエコーをしていると、理事長のところに、ある女性がやってきました。

この女性、以前、Youtubeの動画で紹介した女性です。モホレ村にアウトリーチをした時の動画をアップしたことがあります。 

IGPC in Sumbuya, Sierra Leone

そこで、理事長がこの女性のお腹を触っている動画をアップしました。

確か、この女性、理事長がエコーをして骨盤位、つまり逆子ちゃん、を見つけた人です。その時、彼女が「この病院(シエラトロピカルの病院)で分娩したい」と言ったのを覚えています。

でも、「まだ分娩施設ないしオペ室もないから、他のところを探してね」と伝えていました。

その女性が、しばらくぶりに理事長のところを尋ねてきました。たしかあの動画は2月くらいだたったはず。その時すでに10ヶ月だったので、もうとっくにお産しているはずです。

結局、赤ちゃんは死産だったそうです。

助産師のハワの話だと、臍帯脱出だったとのこと。臍帯脱出というのは、赤ちゃんが生まれてくる前に、臍の緒が先に飛び出してしまうことを言います。赤ちゃんは生まれてきて、オギャーと泣くまでは臍の緒から酸素をもらっています。この臍の緒が先に飛び出してしまうと、自分の体と産道の間でへそのを潰してしまうので、赤ちゃんは酸欠状態になってしまいます。

こういう合併症が多いので、日本では逆子ちゃんは、多くの場合帝王切開での分娩になります。

こちらでは、経産婦さんの逆子ちゃんは帝王切開の適応にはなりません(初産の場合は適応になります)。

近年は、逆子ちゃんの経膣分娩も、予後に差がなかったとする論文もでているので、日本を含め欧米先進国でも希望があれば経膣分娩する施設もあるみたいですが、それでもほとんどの施設はまだ帝王切開を選択していると思います。

この女性が診療所に来たのは、お産してから左足がうまく動かせないので、ちょっと診て欲しいということでした。

診察してみると、確かに左足のほうがすこし細い気がします。歩くのもびっこをひいています。

分娩の時の神経障害でしょうか。分娩の時の様子を聞くと、意識を失っていたのでよくわからないと言います。

いったい、病院では何をされたのか。彼女がお産をした病院は、この近くではボーの病院より近く、一応手術施設もあります。しかし医者はいません。医者はいないけど、帝王切開はします。でも、それだけです。医者じゃないので、医学的な管理なんてできません。

ここでは、今この女性にできることは限られています。気休めにしかならないビタミン剤を持たせて、とりあえずはゆっくり休むように、と伝えて家に返しました。

結局、エコーで事前にハイリスク妊娠が分かっても、それだけでは赤ちゃんを助けることはできませんでした。

確かに、以前はエコーも何もなかったので、スマートフォンでエコーができて、どこでも簡単にアクセスできるようになったのは、かなりの進歩だと思います。でも、それだけでは足りない。

最近、mHealthとかいって、アップルウォッチなどのデバイスをスマホと組み合わせて健康管理する新しい医療分野が注目を集めています。

理事長がこちらでやっているのも、スマートフォンにエコーを付け加えたり、アプリで検診情報を管理したり、まぁ言ってみればmHealthの真似事をしているみたいなものです。

しかし、いつもいろんな人に口を酸っぱくして言っているのは、エコーやアプリを導入しても,それだけでは母体死亡や周産期死亡は改善しない、ということです。

この女性の例にもあるように、エコーで逆子を見つけても、ハイリスク分娩をちゃんと管理できる施設がなければ、いい結果にはつながらないのです。

以前、ワシントン大学を行った大規模な研究があります。2018に発表されたこの論文(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6390492/)では、当時の最先端だったポータブルエコーを発展途上国の村落へ持っていって妊婦健診をしたら、母体死亡、死産、新生児死亡がへるのでは?という仮説のもと、南アメリカ、アジア、アフリカ大陸にまたがって、2年間かけて研究を行ないました。

結果は、上にあげた項目のうち、なに一つ改善しませんでした。

エコーの目新しさに釣られて、妊婦健診の受診率も上がるんじゃないかと、それも検討していますが、それすら改善しませんでした。

スマホでエコーができる、なんて言うと、みんな驚いて、非常にキャッチーではあります。

でも、それだけで母体死亡が減るとか新生児死亡が減るとか、そんな薔薇色の未来を語っている人や団体がいたら、そいつは偽物です。

妊婦一人の命、赤ちゃん一人の命を助けることがどういうことなのか。

それをちょっとでも想像できれば、とてもそんなことは言えない、と理事長は思うのです。

「この病院で産みたい」って言ってくれてたのに。

もしこの病院ができていたら、理事長が自分で管理していたら、もっと違った結果になっていたのでしょうか。

なんだか、やるせないです。

最近は、突然激しい雨が降ります。大抵夜中に降ることが多いのですが、今日は夕方に降りました。

いつも埃っぽいスンブヤのまちですが、雨が降るとなんだか空気が澄んだ感じになります。

セワ川がゆっくりと流れていきます。

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