なにもない発展途上国で、どうやって早産児を助けるのか

国際保健

こんにちは。

今回は前回のつづきです。

周産期医療は金がかかる?

早産児、つまり未熟でうまれてきた赤ちゃんたちをどうやって助ければいいのでしょうか。

一口に「早産」といっても、22週0日の赤ちゃんから、もう普通にうまれてきた赤ちゃんと変わらない36週6日の赤ちゃんもいます。

当然、必要とされる治療や補助も違ってきます。

しかし、共通しているのは、保温、呼吸補助、栄養です。

日本の周産期母子医療センターと言われる施設には、新生児集中治療室というところがあります。

以前、このブログでもご紹介した漫画「コウノドリ」にも出てきますね。

小さな赤ちゃんが、透明な箱の中にはいっていて、まわりをずらりと機械が取り囲んでいる、あの部屋です。

もう見るからに、ハイテク医療機器の集まりです。これらの医療機器は、基本的に赤ちゃんを温めてあげて、呼吸を助けてあげて、栄養をあたえるためのものです。

22週から23週くらいで生まれてくる赤ちゃんは、すべてにおいて未熟です。

自分で息をすることができません。おっぱいを飲むこともできません。

皮膚もまだしっかりできていません。身体中の水分が、うすい皮膚を通り抜けて蒸発してしまうくらい薄いのです。

そのような未熟な赤ちゃんを管理することに特化した日本のNICUでは、最先端の保育器と、人工呼吸器、そしてふんだんな医療資源を使って、最も弱い命を助けることができます。

湿度や温度を24時間モニターして適切に調整できるハイテク保育器、小さい赤ちゃんでも使用可能な人工呼吸器、1時間に0.3ccとか、微量の点滴ができる輸液ポンプ、などなど。。。

生育限界と言われるような未熟な赤ちゃんたちを助けるためには、このような高額医療機器に加え医者や看護師さんなど、大量の医療資源を必要とします。

発展途上国で生まれる早産児の多くは32週以降

資源の少ないアフリカやアジアの国々で、とてもできるような医療ではないのでは、と思われるかもしれません。

しかし、22週くらいの生育限界にあるような早産児ではなく、32週以降の中期から後期早産児(WHOの定義に基づく)の早産児は、それほど医療資源を投資しなくても、保温、呼吸管理、栄養管理を行うことができる、というのが理事長たちの考えです。

前回の記事で、実はうまれたばかりの赤ちゃんが死亡する理由で最も多いのは、早産だ、というお話しをしました。

発展途上国で生まれる早産児は、年間1500万人と推定されています*。

実は、この早産で生まれる赤ちゃんのなかで、約80%が32週以降に生まれる早産児なのです。そして、この約半数が、新生児期に亡くなってしまうのです*。

日本の周産期センターでもしこの32週以降に早産児が生まれたとしたら、何か大きなトラブルさえ起きなければ、ほぼ間違いなく生存できます。

最近では、この後期早産児特に34週から36週にかけての早産はやっぱりいろんなリスクが高いと言われていますが、それでも22、23週の子たちにくらべれば、はるかに成熟しており、ほとんどのケースは無事に退院していきます。

*参考文献:World Health Organization (WHO). Born too soon: the global action report on preterm birth. Geneva; 2012. 

発展途上国でも早産児を助けられる

先ほど、早産児の管理方法として重要なものとして、体温管理を説明しました。

生まれてすぐの赤ちゃんの大敵は、体温の低下です。

大人は寒い時にガチガチと震えますよね。体を小刻みに震えさせることで、熱を産生して体温の低下を防いでいるわけです。ところが、赤ちゃんはまだこれができません。

そのため、あっという間に体温が下がってしまいます。

人間は恒温動物なので、体温を一定に保たないと、あらゆる機能が停止してしまいます。

なので、赤ちゃんの生命維持にまず必要なのは、「保温」、ということになります。

しかし、32週以降の赤ちゃんは成熟していると言っても、やはり早く生まれてしまった赤ちゃんですので、自分で体温管理ができません。

このような場合、世界保健機構WHOがおすすめしているのは、「カンガルーケア」です。

日本では、早期母児接触といっていますが、ほぼ同じよなものです。

生まれてすぐお母さんに抱っこしてもらってあってめてもらう。カンガルーケアが早産児の生存率を上げるという研究はたくさんあります。

私たちも、当然カンガルーケアが大事だと思っています。

しかし、シエラレオネやネパールの経験から、すべてのお母さんがカンガルーケアができるわけではない、という現実もみてきました。

例えば、早産や小さく生まれる場合は、緊急で帝王切開になることが珍しくありません。お母さん自身もかなり重症ですから、術後管理を集中治療室で行うことがあります。その場合、お母さんの容態が安定するまで、カンガルーケアをすることができません。

あるいは、赤ちゃんの呼吸や血圧がかなり不安定な場合があります。

このような場合は、早く暖かい環境を用意してあげて、呼吸などを安定させてあげることが、その後の予後を大きく左右します。

そういった場合に対処するためには、お母さんの抱っこの代わりに赤ちゃんを温めてあげるものが必要です。

日本であれば、赤ちゃんを保育器に入れて管理するのですが、電気を常時使うため発展途上国での使用には向いていません。

ですので、理事長たちは、電気を使わないで、赤ちゃんをあっためられ、リユースできて、壊れてしまってもかまわいくらい安価である、そんな保育器の開発を進めてきました。

幸い、32週以降の赤ちゃんですと、皮膚もしっかりしているので、高機能の湿度や温度管理機能は必要ありません。単純に、保温を目的とした機能さえあれば十分です。

現在、理事長のNPOでは、アトムメディカルという会社と一緒に、簡易保育器を制作中です。

実際にシエラレオネで使用した動画もありますので、ぜひフェイスブックを覗いてみてください。この臨床研究の結果は、現在論文投稿中です。

さて、残りの二つ、呼吸管理と栄養ですが、またの機会にお話ししたいと思います。

本日は長くなったので、このへんで。

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