痩せと妊娠

周産期

こんにちは。

最近、外来をしていると、妊婦さんの痩せがとにかく目立ちます。20、30代の日本人女性における「痩せ」が占める割合は年々増加傾向にあります。(厚生労働省 平成29年度国民健康白書)。

産科外来での相談も、体重増えすぎてないかどうか気にする人が非常に多いです。

そこで、今回は、BMIが妊娠に及ぼす影響を研究した論文をご紹介します。

2016年12月Fertility and Sterilityの論文です(こちら)。

「米国における体外受精をした女性BMI値(特に痩せと肥満)と妊娠転機の関係」といった内容です。

結論から言いますと、妊娠前に痩せ(BMI<18.5kg /m2)だった女性は、対外受精後の成功率と生児獲得率(20週以降の分娩)が、正常BMI(18.5ー24.9kg /m2)と比べて、低かったといことだそうです。

さらに、痩せも肥満も、あかちゃんの低体重と早産のリスクは、正常BMIの人と比べると上昇していました。

以前から、肥満(BMI>30kg /m2)の女性が妊娠した場合の望ましくない結果については多くの報告がありましたが、痩せの女性に関してもやはり同じように、体外受精の結果が思わしくないことが報告されました。

研究対象となったのは、2008年から2013年にかけて、Natinonal ART Surverlance Systemに登録され、身長、体重などのデータが入手可能であった180855件の妊娠です。こういう国家レベルでの登録制度があるところが、アメリカってすごいですね。。。

この研究では、体外受精をした数に対して、どれだけ妊娠したか、どれだけ生児獲得できたか、を調べています。

さらに妊娠した人を対象として、体外受精をした数に対して、低体重の赤ちゃんが何人だったか、あるいは早産が何人だったか、をみています。

肥満と痩せとどちらも結果があるのですが、今回は痩せの人の場合をみてみます。

まず、正常BMIの女性の場合、妊娠率は46.1%でしたが、痩せの女性の場合、44.7%でした。生児獲得率は、正常BMIの場合38.3%でしたが、痩せの場合37.2%でした。

ちょっとしか下がっていないように見えますが、対象数が多いので、数%の差でもこれは統計的にみると有意な差になります。

同じように、うまれてきた赤ちゃんの体重をみてみると、正常BMIでは、あかちゃんが低体重だった割合は、8.6%であったのに対して、痩せの場合11.9%でした。早産の場合は、正常BMIの場合、10.8%であったのに対して、痩せの場合12%でした。

あきらかに痩せている女性のほうが、あかちゃんの低体重や早産が多いことがわかりました。

しかし流産率に限って言えば、正常と痩せの女性で差はありませんでした。

著者らはさらに面白いグラフを作ってくれているのですが、どのBMIが一番妊娠しやすいか、ということを調べています。それによるとBMI19-22くらいがピークで、妊娠率は47%くらいになります。

BMI15くらいだと42%くらいで、BMIが上昇するごとに妊娠率も上昇するのですが、BMI25をすぎるあたりから下降しはじめて、あとは肥満になるとさらに下がってしまいます。

同じような傾向が、生児獲得率についても言えるみたいです。

しかし流産率を見てみると、BMIが上昇するにつれて右肩上がりに上昇していきます。特に流産率がピークとなるBMIはないみたいです。

著者らは、アメリカでは一貫して痩せの妊婦は減ってきていて今問題となっているのは肥満妊婦が増えてきていることだと言っています。日本ではその逆の事態が進行しているような気がします。

まとめ

BMI<18.5kg /m2より低い女性が、体外受精を受けた場合

  • 正常BMIの女性にくらべて、妊娠率が低い
  • 妊娠した場合、低体重あるいは早産のあかちゃんが生まれるリスクが高い

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