産後大出血に対して、子宮タンポナーデ療法は有効か?

周産期

こんにちは。

産後出血につかうバルーンタンポナーデに関して、メタ解析をした論文がでました。

例えば、手や足で怪我をして出血してしまったら、手で押さえる、って普通だれでもやりますよね。出血を止めるには圧迫する、これが一番効くんです。

ところが、分娩後の出血は子宮内からの出血です。これをどうやって手で止めるの??と思われることでしょう。

分娩のあとに出血が止まらなかった場合、とにかく双手圧迫(両手であっぱく)しろ、と医者になったころは指導されましたし、今でも第一選択の方法です。

でも、とにかくつらい。場合によっては何時間も圧迫するため、やるほうもやられるほうもとにかく大変です。

そこで、風船(バルーン)を子宮内に入れて止血しよう、ということをよくやります。

なんとも原始的なのですが、古くから行われている方法です。

というわけで、このバルーン圧迫止血方法がほんとに効くのかどうか、いくつかの研究結果をまとめて分析してみました、という内容です。

2020年4月 American Journal of Obstetrics and Gynecologyに掲載の論文です(こちら)。

ランダム化試験、非ランダム化試験、ケースシリーズ研究など、バルーンタンポナーデの効果を研究した論文をデータベースから検索。アウトカムは、産後出血に使用したバルーンタンポナーデの成功率。

91の研究から4729人の女性を対象とした。研究の内訳としては、6個のランダム化試験、1個のランダム化クラスター試験、15個の非ランダム化試験、69個のケースシリーズをピックアップしています。

全体の成功率は85.9%でした。一番成功率が高かったのは、弛緩出血で87%。前置胎盤86%、逆に低かったのは穿通胎盤スペクトラムで66.7%、子宮内胎盤遺残76.8%。

帝王切開後は、経膣分娩後にくらべると成功率が低かった(81.7%VS87.0%)。

しかし、研究によって結果は様々。。。

2つのランダム化試験の結果をみると、経膣分娩後の弛緩出血に使用した場合、外科的介入や母体死亡の頻度に関して、差がなかったとしています。

さらに、バルーン導入前と後を比較した2つの研究の結果では、バルーンを使用したほうが、動脈塞栓術をする使用が減っていました。

ランダム化していないクラスター研究では、バルーンを使っていた方が侵襲的な方法をとることが少なかったとしています。

ランダム化したクラスター研究では、バルーン導入後のほうが侵襲的な方法や母体死亡が多かったとしています。

このように、効果はあるものの、一概に母体死亡を減らしたり、侵襲的な方法をしなくてもいい、とはならないみたいです。んーどう考えたらいいんですかねー。

問題なのは、このバルーンを使った成功症例の定義が何か?ということですが、とりあえず母体死亡に至らず出血がとまって、そのあと手術や動脈塞栓術をしたっていう症例は、成功例として数えています。

一方、バルーンを使用しても母体が死亡あるいは手術や塞栓術をしたっていう症例は失敗として数えています。

しかも、このRCT、よくみてみるとかなり研究の質がわるそうです。

たとえば使い方のトレーニングが半日しか行われてないとか、バルーンつかった群のほうが明らかに出血多かったとか。。。

しかし、この論文おもしろい結果が書いてありました。

先進国で使うバルーンは、Bakriバルーンを使用することが多いです。日本でも、バルーンタンポナーデといえばBakriバルーンを使用する施設が多いと思います。

この論文では、このBakriバルーンとコンドームをつかったバルーンの比較をした結果ものせています。

なんでこんな比較をおこなうかというと、このBakriバルーン、ものすごく高価です。数万円します。

ところが、コンドームを使うと数百円くらい(左図)。実際に、このコンドームバルーンを理事長もアフリカで使用してました。理事長の実体験からは、高いBakriよりもコンドームのほうが効果あるかも??と思っています。

結果は、コンドームを使用した場合の成功率は90.4%で、Bakriを使用した場合の83.2%より高かったと報告しています。

しかし、Bakriとコンドームを比較したランダム化比較試験(ウガンダ、エジプト、セネガルの病院で実施)が1つあるのですが、その結果は、両者で成功率に差がなかったとしています。んー残念。。。

結局、バルーンタンポナーデは効果はありそうだが、結論を出すにはもっと質のいい研究が必要ということみたいです。

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