分娩誘発をするときに、早めに人工破膜をするといいことあるの?

周産期

フォーリーカテーテルあるいはプロスタグランジンを使用した頚管熟化後早期の人工破膜は、帝王切開率を上昇させず、分娩時間を短縮させた、とのメタ解析結果が、2020年4月American Journal of Obstetrics and Gynecologyに掲載されました(こちら)。

人工破膜とは

「人工的」に、とはどういうことかというと、人工的に赤ちゃんを包んでいる膜を破って羊水を流出することを意味します。

赤ちゃんを包んでいる膜のことを卵膜といいます。普通は、陣痛がきて子宮口が十分開いた状態で自然に卵膜が破れて羊水が流出します。このことを、適時破水といいます。

これに対して、陣痛がくる前に卵膜がやぶれてしまう状態のことを前期破水、といいます。

卵膜が破れて羊水が流出してしまうと、ほとんどケースで陣痛がきます。

このことは昔から知られていました。

そこで、この現象を利用して、人工的に卵膜を破って陣痛を起こすことで、分娩を進行させてしまおう、ということが始まりました。

これが人工破膜です。

分娩に長い時間をかけたくない場合や、すぐに赤ちゃんを分娩にしなければいけないとき、などによく行います。

しかし、やはりある意味不自然なことをするわけですから、この人工破膜という医療行為にはリスクを伴います。ですので、日本のガイドラインには、人工破膜について、

人工破膜は、分娩時間短縮効果を期待されて長年伝統的に行われてきたが、その評価は一定していない

産婦人科診療ガイドライン 産科編2020 p .203

としています。人工破膜には理論上、臍帯脱出や感染率上昇の危険があるため、しっかり赤ちゃんの頭が下がっているのを確認してから行うように、としています。

今回は、そんな人工破膜の有効性をみた研究で、無作為割付した研究だけを集めて分析してみました、という内容です。

主要評価項目は、帝王切開率です。二次的評価項目は、分娩にかかった時間、24時間以内の経膣分娩数、赤ちゃんの状態(アプガースコア、感染、羊水混濁、蘇生の有無、NICUへの入院など)です。

帝王切開率は変わらない

4つの研究から、1273人を対象としてます。すべて満期で頭位の症例です。

みんな、計画分娩症例ですので、分娩誘発する前に頸管熟化という前処置をうけています。前処置の方法は、フォーリーカテーテルかプロスタグランジン膣錠を使用しています。

フォーリーカテーテルというのは、水風船みたいなものです。これを閉じている子宮頸部に挿入し、膨らませることで物理的に頸管を押し広げよう、というものです。なんとも野蛮な行為ですね。。。

4つの研究のうち、3つの研究では、頸管熟化をする前に、早期に人工破膜をするのか、そうでないのかを無作為に割り付けています。1つの研究では、フォーリーカテーテルが抜け落ちた時に、無作為に割り付けています。

早期人工破膜に割り付けられた群は、この頸管熟化処置が終わり次第、速攻で人工破膜しています。

それ以外のコントロール群は、自然に膜が破れて破水するのを待つ症例と、もうちょっとしてから(陣痛がくる、あるいは子宮口が4cm以上開いたら)人工破膜する症例とで構成されています。

年齢、初産の割合、分娩週数、などの背景には両群間で差はありませんでした。

さて結果は、帝王切開になるリスクは、早期に人工破膜する群で197/632、コントロール群で198/641、でリスク比は、1.05(95%CI0.71ー1.56)でした。つまり、早期人工破膜した場合の帝王切開リスクは、そうでない場合にくらべて、差がなかった、となります。

つぎに、分娩にかかった時間ですが、早期に人工破膜した群は、そうでない群に比較して、分娩にかかった時間が5時間短かった、とのことでした。

しかし、それ以外の評価項目、24時間以内の経膣分娩数だとか赤ちゃんの状態に関しては差がありませんでした。

著者たちは、早期に人工破膜することは、しっかり頸管熟化が行われていれば帝王切開率をあげることはないし、分娩時間を縮めることができる、と結論しています。

しかしこの論文、帝王切開率が上がらなかったとしているのですが、この結果から言えるのは、上がるかもしれないし下がるかもしれない、ってことだと思うのですが。。。

それに、帝王切開の適応がよくわかりません。

もしかしたら、破膜したことが原因(臍帯因子)で胎児心拍が悪くなって、帝王切開されているケースが人工破膜組で多かったりして、、、、とか勘繰ってしまいます。

人工破膜で一番心配なのは、臍帯脱出という合併症です。

臍の緒がさきに飛び出てきてしまう、恐ろしい状態ですけれど、この研究ではこの頻度は早期人工破膜でも、コントロール群でも変わらなかったみたいです。

しかし、臍帯脱出の頻度は1%にも満たないので、今回の研究では症例数が少なかったから、差がないだけかもしれません。

分娩時間が短くなったとしても、赤ちゃんの予後がはっきり改善されたわけではないので、果たしてほんとうに人工破膜が効果があるのかどうか、まだまだわからないといったところです。

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