アスピリンと分娩後出血と赤ちゃんの頭蓋内出血

周産期

こんにちは。

アスピリン内服により、分娩後出血と新生児の頭蓋内出血が増えるかもしれない、というスエーデンからの論文が、American Journal of Obstetrics and Gynecology online first に掲載されました(こちら)。

現在、妊娠高血圧腎症予防のためにアスピリン内服が推奨されています。アスピリン内服は当然ながら出血のリスク因子ですが、妊婦さんを対象にした大規模な研究はまだなかった、とのこと。

今回の研究は、スエーデン国内の分娩データを元にしたコホート研究です。スエーデンのガイドラインだとアスピリンの容量は75mgだそうです。2013年1月から2017年7月までに分娩になった女性31万人を対象としています。アウトカムは、妊娠中、分娩時、分娩後の出血です。

総数は313624人で、そのうちアスピリンを使用していたのは、1.3%で4088人でした。アスピリンを使用している人は、肥満で経産婦の傾向がありました。また、不妊治療後で多胎が多く、以前に帝王切開をしている割合が多く、高血圧や糖尿などの合併症を持っている割合が高いという結果でした。分娩も、アスピリンを使用している妊婦さんのほうが、分娩誘発や帝王切開が多く、早産になる傾向が認められました。

アスピリンを使用している妊婦さんたちは、当然ながら使う理由があったわけで、その中には出血のリスクが上昇するような疾患も含まれています(妊娠高血圧症候群など)。

そこで、アスピリン使用群と非アスピリン使用群をくらべるのに、患者背景を調整しています。

調整の仕方は、傾向スコアと逆数重み法を使用して解析しています(ここらへんの統計手法は、新谷先生の動画が超絶わかりやすいです!!(こちら)。

要は、アスピリンの影響を調べるのに、もともとある出血リスクが異なる妊婦さんたちを比べるためには、それぞれのリスク因子を調整してあげないといけなかった、ということです。

それでは出血については、どうだったかというと。。。

妊娠中の出血は、アスピリン群とそうでない群との比較では、一見差があるよに見えましたが(2.4%vs1.8%)、前述の手法で調整すると差がなくなっていました((adjusted OR [aOR], 1.22; 95% CI, 0.97e1.54)。

しかし分娩中、分娩後の出血リスクは増加していました。分娩中の出血は、アスピリン群で2.9%、非アスピリン使用群で1.5%で、これは調整後も差がありました。分娩後の出血は、アスピリン使用群で10.2%、非アスピリン使用群で7.8%でした。

さらに、アスピリン使用群の女性から生まれた赤ちゃんで、頭蓋内出血があったのは0.07%(3人/4088人)で、非使用群の赤ちゃんの0.01%(17人/309536人)より、リスクが高いという結果でした(調整後も同じ)。

分娩方法別にみてみると、経膣分娩においては、産後出血と赤ちゃんの頭蓋内出血でアスピリン使用群のほうがリスクが高いという結果でした(帝王切開では両群で差がありませんでした)。

赤ちゃんの頭蓋内出血については、2007年のコクランレビュー(こちら)で、母体のアスピリン使用との関連はない、との結果でしたから、結構ショッキングな結論です。

2019年のレビューでも、アスピリンは安全だ、との結論になっています。

今回の論文ではさらに、妊娠高血圧腎症を発症した人を除いて同じような解析をしていますが、やはり分娩中と分娩後の出血はアスピリン使用群で多い傾向にありました。しかし、新生児の頭蓋内出血のリスクは上昇していませんでした。

最近は、妊娠高血圧症候群の既往がある女性が妊娠した場合、アスピリンを処方をすることが一般的になりつつあります。アスピリン内服するとことで、周産期予後がよくなったとする研究が多いのですが、やはりリスクはゼロではなさそうです。

今日はこのへんで。

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