コロナウイルス と発展途上国

国際保健

こんにちは。

今日は世界的に有名な医学雑誌Lancetの記事をご紹介します。

題名は、「Covid-19はグローバルヘルスを破壊したのか?

ハーバード大学 Harvard T H Chan School of Public HealthのRichard Cash先生とVikram Patel先生が寄稿されています(こちら)。

内容は、COvid-19に対して、先進国のやり方であるロックダウンとICU(集中治療管理室)に代表される先進医療中心の対処方法を、発展途上国で行うのは危険である、というもの。

先進国に住む我々は、さも自分たちのやり方が正しい方法であるかのように、アフリカ諸国のような低所得国にアドバイスをするだろう、でもそれは大きな間違いである、と先生たちは言っています。

その理由は、これらの方法は、「コンテクスト」と「社会正義と平等」という、最も大事なものを無視しているから、と主張しています。

「コンテクスト」とは

ちょっと抽象的でわかりずらいですが、「コンテクスト」というのは、発展途上国はそもそも人口の大部分を若い世代が占めていて、もっもリスクの高い持病をかかえた高齢者が大多数を占めている先進国とは違う、ということです。

ですから、Covid-19で死亡する人々が、全体の死亡者数に占める割合は、これらの国々ではほんのささいなものだと思われます。

でも、ロックダウンをして外出制限がかかると、医療機関にかかえれない人が多くなります

発展途上国では、肺炎だとか下痢だとか、これらの感染症で死亡する子供がまだまだ多いのが現状です。抗生剤だけ貰れえれば助かるのに、助けられない子供が増えてる。

たとえば、インドでは3月下旬から外出制限が施行され、その結果ワクチン摂取率は69%、施設分数は21%、急性心疾患での受診率は50%ほど下落しているという。

さらに、マラリアよけのかや配布事業は中止を余儀なくされ、ポリオワクチン接種キャンペーンも中止したままです。

そして、なにより重要なのは、PCR検査なんてできる施設は限られているという事実です。

当然、患者さんに呼吸器つけてICUで管理なんてできるわけない。

ワクチンが届くなんて、まだまだずっと先のはなし。まずは先進国が買い占めて、そのおこぼれがもらえるかもしれない、というのは歴史が示すとおり。

先進国とおなじような政策をとって、ただでさえ希少な医療資源を検査とかICUとかに使ったら、恩恵を受けるのは一人握りの特権階級だけで終わってしまい、多くの人々は取り残されてしまうだろう、と述べています。

もっと問題なのは社会正義と公正

ロックダウンして一番困るのは社会的に弱い立場の人、その日の生活費をその日に稼がないといけない人たちです。

これらの人々の一番の脅威は飢えです。学校給食がなくなれば、たちまち飢える子供が増えてしまいます。

だから人々は外にでて働かないといけない。すると、警察がやってきて、殴るけるの暴行を繰り返す。今は、「家で大人しくしてろ」と。

これが、インド、ナイジェリア、ケニア、南アフリカでおこっていることです。

著者たちは、次のように言います。

今できることは、人々に生活を取り戻させることー働き、稼ぎ、そして食卓の上にたべものを、これを優先させるべき。店主たちに言おう、店を開けて商売をはじめよう、そしてサービスを提供しよう。建設作業員は現場へ戻ろう。農家は収穫し、市場へ持って行って作物を売ろう。医療者は、十分な予防策をとったうえで、いつも通りに職場へ戻ろう。

www.thelancet.com Published online May 5, 2020 https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)31089-8

最後に著者たちは、政策を考える人たちに向けて、警鐘の意味を込めてヒポクラテスの言葉で締めくくっています。

「まずはじめに、害をなすなかれ」

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